噛み合わせについて一から十まで解説します!放置するデメリットや治療方法を紹介
噛み合わせについて「状態が悪い」という自覚症状を持つことになるまでには、さまざまなキッカケがあるでしょう。
多くの人は自身の口内環境に慣れてしまっている為、状態が良くないことに気づかないまま生活しているケースが非常に多いのです。
私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。ここをご覧下さる方の多くが、歯並びに何らかのお悩みをお持ちだと思います。私は全ての方の歯並びのために矯正歯科治療が必要だとは考えておりません。
ただ、明らかに治療が必要な、日常生活や対人関係に支障をきたす歯並びや咬み合わせをお持ちの方もいらっしゃいます。そのような方にとっては矯正歯科治療をすることには様々なメリットがあります。見た目の印象がより良くなるだけではなく、口腔内の環境や体全体にも良い影響があると考えられます。
今回は、噛み合わせをテーマにして、お話ししてみましょう。
正しい噛み合わせについて
正しい噛み合わせがどういったものなのか、正確に把握している人は少ないと思います。「何となく不具合を感じないから大丈夫」といった認識で、自身の噛み合わせを判断しているのではないでしょうか。
しかし専門医は、正しい噛み合わせと呼べるかどうかの明確な基準を持っています。どのようなものなのか説明しましょう。
奥歯の状態
前から3番目にある犬歯を含んでそれよりも奥にある6番目までの歯は、歯の山(歯冠の尖っている部位)に対して谷(2本の歯の間)で受けるように、互い違いに噛み合っている状態が理想的です。
6番目の「第一大臼歯」と呼ばれる歯以降の奥歯は、上下の歯が1対1で噛み合うでしょう。その際、上側の歯冠における頬側の突起が、下側の溝の部分で噛み合っているのが正しい状態です。
前歯の状態
上側の前歯が下側に対して2mm程度被さる状態が、正しい噛み合わせです。この噛み合わせの深さのことを「オーバーバイト」といい、深く被さりすぎるのは問題があるとされています。
そして前歯の噛み合わせを真横から見た時に、上下の歯における前後のズレのことを「オーバージェット」と呼ぶのです。これに関しても、上下の歯の先端同士の距離が2~3mm以内に収まっていると良いでしょう。
犬歯の状態
上下の歯を噛み合わせたまま、歯ぎしりをするように左右にズラすと、上下の犬歯同士のみが接触する状態が良い噛み合わせとされています。
その際、奥歯には隙間が出来ているはずなので、そのことを確認しましょう。このように、犬歯だけが触れ合っている状態になることを「犬歯誘導」と呼びます。
関連記事→ 「理想の噛み合わせ」を専門の認定医が解説!前歯や奥歯が当たらない噛み合わせはNG?
噛み合わせを放置するデメリットとは?
噛み合わせの悪い人が「食事ができているし、特に不都合を感じない」といった理由で、その状態を放置していると症状がさらに悪化するケースがあるでしょう。
未然にそういったトラブルを防ぐことが大切なのですが、そのことを自覚するのは結構難しいものです。ここでは、悪い状態を放置することによるデメリットについて解説しましょう。
関連記事→ 噛み合わせが悪いことのデメリットとは?簡単なセルフチェックのやり方と治療方法を紹介
歯や歯茎の一部分に力が集中する
正常な歯列の人は、歯を噛み合わせた時の力を歯列全体で受け止めるようになっているはずです。その為、全体の歯を使って軽い力で食べ物を咀嚼できるでしょう。
しかし、異常を抱えている方は噛むのに強い力を要したり、一部の歯だけに大きな負担がかかってしまいます。その結果、歯が折れたり亀裂が入ったりする危険があり、歯茎の炎症も引き起こされる可能性があるでしょう。
虫歯や歯周病を引き起こしやすい
噛み合わせの不具合の原因が歯並びにある場合、お互いの歯が重なり合って生えたりしているケースが考えられます。そういった状態は、歯が邪魔をして歯ブラシの届かない箇所が出来てしまうでしょう。
歯磨きがうまく出来ない結果、雑菌が溜まることになり口内環境が悪化してしまいます。それによって虫歯や歯周病が引き起こされてしまいかねません。
顎関節症の原因になる
下顎と上顎が噛み合わさる支点になっているのは、顎関節です。噛み合わせが悪いと、その影響は顎関節にまで及んでしまう可能性があるでしょう。
噛み締めるたびに関節から音がしたり、口が開けづらいといった症状が出たら注意が必要です。それを放置して、噛むたびに痛みを感じてしまう重い症状になると、食事を摂ることすらままならなくなってしまいます。
頭痛や肩こりに悩まされる
噛み合わせがおかしいと、その状態をカバーする為にまずは下顎でバランスを取ろうとします。それでもアンバランスな状態が解消されない場合は、首や肩といった部位にまで影響が出る場合があるでしょう。
その結果、肩こりの症状に悩まされるケースも考えられます。また不要な刺激が脳に伝わってしまうと、そのことが原因で慢性的な頭痛を引き起こす恐れがあるでしょう。
関連記事→ 噛み合わせが頭痛の原因になっている?体の不調を引き起こす噛み合わせの改善方法とは
顔貌が変わってしまう
噛み合わせの良くない状態で放置すると、上顎や下顎のどちらかが前突したり顔の正中線がドンドンとズレていくなどのトラブルが発生します。
その結果、顔立ちに歪みが生じてしまい、ルックスに変化が出てしまう可能性があるでしょう。人前に立つことにコンプレックスを感じてしまうこともある為、放置するのは危険です。
噛み合わせが悪くなる原因
そもそも、なぜ噛み合わせが悪くなるのでしょうか。もちろん、先天的に顎に異常を抱えていることが原因の方もいますが、多くは生活をしていくなかで発生してくる問題なのです。
どうして噛み合わせが悪化するのかという点について、詳しく見ていくことにしましょう。
無意識に身についた癖
指しゃぶりや頬杖をついたり、片側だけの歯で噛むといった癖によって、噛み合わせが狂ってしまうケースがあります。指しゃぶりは開咬や上顎の前突を引き起こしてしまうでしょう。
また、頬杖によって噛み合わせが深くなるトラブルが引き起こされるでしょう。それと同時に顎関節にも負担が掛かってしまうので、顎の骨が歪んでしまう可能性もあります。
また、片方の歯だけで食べ物を噛んでいることも、顎が歪んでしまう原因になるでしょう。歯の噛み合う部位だけで咀嚼した結果、そのような癖が身に付いてしまうので注意が必要です。
口内環境トラブル
歯周病がなぜ怖いのかというと、症状が進むと歯を失ってしまう恐れがある為です。歯の土台となっている骨を「歯槽骨」と呼びますが、歯周病はその骨を吸収してしまうことで、顎の骨が溶かされてしいまいます。
そうなると、歯が大きくぐらついたり、不安定な歯並びになってしまうでしょう。噛み合わせに不具合を感じるようになってしまいます。
また、虫歯や歯周病で歯を失った際に入れ歯やブリッジを入れることなく放置していると、本来噛み合うべき歯を失った向かい合わせの歯が長く伸びてきたりします。ひどいものだと欠損部分に食い込んでしまうでしょう。
さらには、欠損した部位の隣にある歯が倒れ込んできたりするトラブルも考えられます。抜け落ちたまま放置するのは、歯並びが乱れてしまうことを覚えておきましょう。
生活(睡眠)環境
ストレスなどを抱えている人は、睡眠時に歯ぎしりや食いしばりといった行為を無意識にしてしまうケースがあります。歯が削れてしまったり、ぐらついてしまう原因になる為、注意しなくてはなりません。
また、歯を押し出したりすることで、噛み合わせまで狂ってしまい顎に歪みを生じる場合もあるでしょう。そうなると連鎖的に睡眠時における呼吸の仕方にまで影響が及んでしまいます。
具体的には、歯並びや噛み合わせがおかしくなったことで口呼吸になってしまうのです。口呼吸は雑菌を抑える効果のある唾液が乾燥するので、虫歯や歯周病、口臭がするなどの症状が出てしまうでしょう。
噛み合わせの治療方法
噛み合わせを改善させる方法は実に多様です。専門の病院を訪れれば、自身の症状に合わせて最適な治療法を提示してくれるでしょう。どのような治療方法があるのか、代表的なものをピックアップして紹介します。
関連記事→ 噛み合わせの治し方は一つじゃない?治療方法を決めるために症状と検査内容を深堀りする!
生活習慣の改善
自宅でできるストレッチなどで血流を促進させ、関節の機能改善に繋げる方法など、さまざまな手段で生活習慣の改善を目指します。
例えば、左右の噛み合わせのバランスが崩れている人に対しては、口をゆっくりと開閉させる運動をしたり、ビニールチューブを噛む運動をすることで、顎まわりの筋肉や顎自体を強化することになるでしょう。
他にも「スプリント療法」といって、就寝中にマウスピースを装着することにより、噛み合わせの悪い状態を改善させる手法があります。歯ぎしりをする人に効果的な治療法と言えるでしょう。
補綴治療
歯を失ったままで放置するのは症状を悪化させる為「補綴(ほてつ)治療」と呼ばれる手法を用いて治療を行います。具体的にはインプラントやブリッジ、入れ歯治療などが当てはまります。
これにより、損失した部位の周囲にある歯が倒れ込んでくる症状を防いでくれるでしょう。また、補綴物によって、向かい合わせになる歯にもしっかりと噛み合う状態を作り出し、歯列が乱れるのを防止します。
リシェイピングと咬合再構成
上下の歯同士は「点」で接触している状態が理想とされています。歯のすり減りなどで面接触になってしまっている場合は、点接触に戻すような「リシェイピング」と呼ばれる治療を行うでしょう。
またそういったリシェイピングの治療に際して、歯の噛み合わせ面に樹脂材を加えたりし、適正なものにする治療が必要になるケースもあるのです。そういった措置は「咬合再構成」と呼ばれています。
歯列矯正
歯並びの乱れが原因で噛み合わせを悪くしている場合、歯列矯正によって歯並びを適正なものにする治療法が採用されるでしょう。
関連記事→ 噛み合わせは矯正で改善できる?理想の噛み合わせ・歯並びを手に入れる方法とは
矯正治療ごとのメリット・デメリット
噛み合わせを良くする歯列矯正と一言でいっても、その治療方法は多彩です。そのなかでも代表的な施術法について、そのメリットとデメリットを解説したいと思います。
ワイヤー矯正(表)
表側からのワイヤー矯正は、もっともオーソドックスな歯列矯正の方法です。メリットとしては、さまざまな症例に幅広く対応できることでしょう。
逆にデメリットとしては、食片が器具に引っ掛かりやすい問題があるでしょう。放置すると虫歯の原因になる為、しっかりと手入れしなくてはなりません。
また歯の表側、つまり唇側から装置を取り付ける為、目立ってしまう点もデメリットになり得るでしょう。
ワイヤー矯正(裏)
先に挙げた「目立ってしまう」というデメリットを改善できるのが、歯の裏側、つまり舌側から矯正装置を取り付ける方法です。「目立たない」ということそれ自体が、この治療法のメリットと言えるでしょう。
デメリットとしては、装置に舌が触れてしまうので違和感を覚えたり、発音のしづらさを感じたりする点が挙げられます。
また、歯の裏側に凹凸のある部品が付いていることから、歯磨きなどの手入れが大変で、磨き残しが生じやすい点も注意しなくてはなりません。さらには、表側矯正よりも治療期間が長引くケースがあります。
マウスピース矯正
マウスピース型のメリットとしてまず挙げられるのは、ワイヤー型と違って、食事や歯磨きの際には取り外せることではないでしょうか。さらに透明なので目立たず、樹脂製なので口内を傷つけることもないでしょう。
デメリットとしては、1日の装着時間が決められているのにも関わらず、それを守ることが出来ないことで治療期間が伸びる可能性があることです。
またワイヤー型での矯正に比べて、対応できる症例には限りがあることを覚えておきましょう。
ユニゾン矯正歯科銀座6丁目なら「歯列矯正の必要性」について相談可能!
当院では全ての方の歯並びのために矯正歯科治療が必要だとは考えておりません。矯正治療をしなくても特に支障がない場合はそのように伝えるようにしています。
しかし、矯正治療が必要な症例や、矯正治療の効果が大きい症例が数多く存在することも事実です。
歯並びを治すことによって、きれいな歯並びを手に入れるだけでなく、歪んだように見える顔立ちや口元の雰囲気まで改善できる場合があります。見た目の印象がより良くなるだけではなく、口腔内の環境や体全体にも良い影響があると考えられます。歯列矯正をしたことで性格がますます明るくなり、心にもいい影響があったと思われる方が多いのも事実です。
ご自身の歯並びの問題を、歯列矯正によって改善できるのかどうか、初診相談を受けて、知ることから始めませんか。
自分に合った噛み合わせ治療を始めてみましょう
以上、正しい噛み合わせを紹介し、放置することのデメリットを説明しました。また、状態が悪くなる原因や治療法に触れた上で、矯正治療のメリットとデメリットを解説しました。
現在では不正咬合全般に対応する「噛み合わせ外来」が存在しているので、そういった医院に足を運んで自身の状態を知ることも悪くないでしょう。
もちろん、当院でも噛み合わせの悩みにお答えしています。少しでも気になることがある方は、ぜひ一度相談にお越しください。
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