歯列矯正で口元が下がりすぎてしまう?理想の口元にするために知っておきたい注意点

歯列矯正で口元が下がりすぎてしまう?理想の口元にするために知っておきたい注意点

「口元が前に出ているのが気に入らない」という理由で歯列矯正した結果、口元が奥へと下がりすぎてしまうトラブルを抱えてしまう患者さんが少なからず存在しています。

私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。大学病院で19年間矯正歯科医として勤めてきましたが、その間、口元を突出感を主訴とする数多くの症例を実際に治療してきました。抜歯が必要な症例、抜歯が必要でない症例、外科手術を併用すべき症例を数多く経験し、また大学の教員として後進の多くの矯正歯科医師を指導してきました。さらには、大学病院という専門機関ならではですが、セカンドオピニオンとしていらっしゃる患者さんの、地元の歯科医院で受けた治療の数々のトラブル症例を目にする機会もありました。治療する矯正歯科医師に抜歯の必要性や必要部位を的確に見立てる力がないと、口元が下がりすぎてしまうトラブルに直結することを誰よりも実感しています

美容目的で「歯列矯正をすることで口元が美しくなる」と考えて、多くの方がクリニックに来られ、歯列矯正を行いますが、歯の動きやすさには個人差があります。歯の動きやすさの個人差も考慮したうえで、きれいな口元になりたいという患者さんの要望に応えつつ、矯正治療によって口元が下がりすぎないよう適切に処置をしています。そうすることが矯正歯科医の使命だと考えています。

今回は歯列矯正をした結果、口元が引っ込みすぎて後悔しない為に、知っておきたいポイントを紹介しましょう。

歯列矯正で口元が下がりすぎるケースとは?

「口唇が前に出てしまうのは歯並びの悪いせい」と決めつけている人もいるかも知れません。そういう人は、すぐにでも歯列矯正で口元を下げたいと考えるでしょう。

しかしアジア系の人種によくあることなのですが骨格に起因して口元が前に出ていることもあります。上下の歯の噛み合わせが良いにも関わらず口元が前に出ているケースも存在しているのです。歯列矯正をした結果、口元があまり奥へと下がらない人もいれば、逆に下がりすぎる人もいるのが現実で、それぞれの患者さんによって得られる効果は異なってきます。

そもそも口元を下げる治療は、どのような口元と歯列の方に対する治療なのか、改めて確認してみましましょう。

出っ歯の矯正

出っ歯のことを「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」といって、上顎の前歯が出ている人は口唇が前方へと突き出したような輪郭になっているでしょう。

そのため、症状がひどい人は上顎の奥歯を抜歯してスペースを作り出し、前歯自体を奥へと下げていく抜歯矯正が行われます。その際は歯を大きく動かす必要があるので、ワイヤー型矯正装置が用いられるでしょう。

抜歯を伴う歯列矯正をした結果、歯列とともに唇の位置が奥へと下がっていき「小顔になった」「輪郭が引き締まった」という印象を与えることも可能になります。

しかし、過剰に抜歯をして過剰にスペースを作って歯列の位置を下げ過ぎた場合は、バランスが崩れて理想的な顔立ちを獲得することが難しくなるでしょう。

どんな症例でも上下左右4本の小臼歯を抜いて矯正することが正しいわけではありません。抜歯は上だけの左右2本だけにしたり、場合によっては上の片側だけ1本だけ抜いて矯正することが正しい場合もあります。経験や研鑽が十分でない歯科医院で、症例に応じた抜歯部位が選択されずに、盲目的に上下左右4本の小臼歯を抜いて矯正治療されたとしたら、良いかみ合わせが獲得できなかったり、さびしい口元の感じに仕上がってしまう場合も考えられます。歯列矯正は経験豊富で十分な研鑽を積んだ矯正歯科専門医院で治療する必要があります。

上下顎前突の矯正

「上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)」は、上顎だけでなく下顎の歯も揃って前方へと突き出している状態です。症状が重い人は前歯を下げるために上下4本の奥歯の抜歯を必要とする矯正治療になるでしょう。

その場合もやはり大きく歯を動かす必要があるため、マウスピース型ではなくワイヤー型の矯正器具を用いることがスタンダードな治療法になっています。

抜歯の本数が多いほど、歯列矯正後の口元は変化するので慎重に見極める必要があります。前突度合いがあまり重くないにも関わらず、過剰に抜歯をしてしまうことで、歯列が奥へと下がりすぎてしまうケースが考えられるでしょう。

歯列矯正で口元が下がりすぎた原因

矯正治療をするにあたって「Eライン」と呼ばれる言葉があります。これは、横顔から見て鼻先と下顎の先端を直線で結んだ線のことで、その線上かやや内側に唇があると美しい口元だと言われています。

歯列矯正を考える人には、理想的な口元を作りたいと考えている方も多いのですが、世の中ではEラインにこだわりすぎて不必要に抜歯矯正を行ってしまい、口唇が下がりすぎて問題となっているケースが稀に見受けられます。

どのような矯正治療によって、口元が下がりすぎてしまうのでしょうか。

理想的な横顔の基準である「Eライン」や、歯を抜く治療について紹介します。

抜歯の必要がないのに歯を抜いた

必要に応じて歯を動かすスペースを作り出すために、「抜歯矯正」を行うケースがあります。

抜歯したスペースを利用してその分だけ前歯を下げる治療法で、抜歯矯正によって口唇が1/2~1/3ほど動くと言われています。

しかし抜歯矯正をするケースは、あくまでも歯を大きく動かすスペースを作り出したい時だけです。不要な抜歯をおこなってしまうと、口唇が奥へと引っ込みすぎてしまうケースが考えられます。

関連記事→ 歯列矯正で抜歯は必須?抜歯をすることのメリット・デメリットや注意点を紹介

Eラインを無視した処置

横顔の理想的なバランスとされるEラインの考え方は一つの指標になっています。

Eラインを無視して、上顎の歯列が前突した状態を引っ込みすぎることにより、相対的に下顎の突き出し感が増します。そのような顔の変化により「顔がしゃくれた」という印象を持つ患者さんが存在するのです。

実は、Eラインは欧米で生まれた考え方なので、鼻や下顎に高さのない日本人にそのままの基準を当てはめて考えるのには無理がある場合もあります。理想の横顔を手に入れるためには、医師と理想のイメージを共有することも重要です。

関連記事→ 歯列矯正でEラインがきれいになる?美しくなるために知っておきたいEラインとは

口元が下がりすぎることの悪影響

歯列矯正によって口元が下がりすぎると、自身が思い描いていた顔立ちにならずに後悔する人も。

この項では、口元が下がりすぎることによってどのような悪影響があるのかについて解説していきます。

口元が貧相に見える

抜歯を伴う歯列矯正をするなどして、口元が引っ込みすぎてしまうと、口の周りの組織が本来持っていた「肌のハリ」が失われて、しぼんだように見えるケースがあります。

美しさを求めて抜歯をしてまで口元を奥へと引っ込めたのにも関わらず、老化に見られる現象のひとつである「口元が貧相に見える」という問題が引き起こされるトラブルが考えられるでしょう。

ほうれい線が濃くなる

口や頬の周りは適度に柔らかい組織で構成されています。

矯正前に歯や顎が出ていたために張っていた口元は、矯正で歯列を奥へと下げていくことで口元の頬も一緒に引っ込んでいきます。

その結果として頬の周りがたるみ、ほうれい線が濃くなった印象になるケースが考えられます。もともと口元のバランスは良いのに、「矯正をした結果、老け顔になった」といった問題が起こるようでは、歯列矯正の意味が無くなるでしょう。

関連記事→ 歯列矯正でほうれい線が濃くなるって本当?気になるほうれい線の対策について

噛み合わせがむしろ悪化する

美的感覚のみを重視して矯正をすると、噛み合わせが悪くなってしまうケースが考えられます。

歯列矯正を始める前にしっかりとした診断をしなかったり、矯正を専門としない先生の施術を受けたりすることで、こうなる場合が見受けられます。

噛み合わせが合わない状況が続くと、顎の関節に負担がかかってしまい、噛むたびに骨がポキポキと鳴ったり痛みを感じる「顎関節症」を発症してしまう恐れがあります。

歯列矯正で口唇が引っ込みすぎると、あらゆるトラブルが発生しかねません。それらはすべて「不適切な診断をされて治療を受けている」と認識した方が良いでしょう。

関連記事→ 噛み合わせが悪いことのデメリットとは?簡単なセルフチェックのやり方と治療方法を紹介

歯列矯正 口元 下がりすぎ 画像

                         

                           

                                             

歯列矯正で口元が下がりすぎてしまった場合はどうすればいい?

「美しさを求めて歯列矯正したのに口元が下がりすぎて後悔している」といった事態は誰だって避けたいものです。治療開始時には「綺麗になれるなら抜歯もOK」と安易に考えているかも知れません。

しかし、抜歯を伴う大掛かりな治療の場合は、口元が引っ込みすぎてしまったと感じてから引っ込んだ歯列を元に戻すことはとても難しいと覚えておいてください。

既に抜歯をして大きく歯を動かした人は、隙間がなく綺麗に並んだ歯列を再び前突させることになるので、歯間が大きく開いたりして歯並びが乱れてしまうこともあります。

大切なのは治療の選択肢を広げて考えてみることです。まずは担当の歯科医に相談し、それでも解決しない場合は、大学病院等の専門機関でのセカンドオピニオンも検討してみましょう。

口元の下がりすぎを防ぐための対策

先の項で述べたように、歯列矯正で口元が下がりすぎると多くの問題が発生してしまいます。せっかく長い期間と高い費用をかけて治療をしているのに、望んだ結果が得られないのは残念なことです。

そのような状態に陥らないために、患者さんの側で取ることのできる手段とは、どういったものなのでしょうか。

カウンセリングを有効に活用する

歯科医も人間ですから、患者さんとの相性というものが存在しています。話を聞いた上で「この人なら信頼できる」という歯科医を見つけ出すことが大切になるでしょう。

まずは自身が「こうしたい」「こういう顔になりたい」という希望をしっかりと伝えてみることです。その考えに対して納得のいく説明をしてくれるクリニックこそが、自身にあった存在であると考えましょう。

事前の精密検査

現在の顎や歯の位置を測定したものを患者さんと共有してくれるクリニックを選ぶべきです。そして、その診断を元にどのような治療をするのかまで含めて、丁寧に説明してくれる医院を探しましょう。

「自分の症状はそうなんだ」と納得ができる説明を受けることが大切です。そして「なぜその治療法を採用するのか」という点についても、満足できる回答を得なくてはなりません。

美容形成外科の考慮

下顎の出っ張りが少ないためにEラインが後退してしまって、相対的に口唇が出ている患者さんを見かけることが良くあります。下顎の骨格に問題のある人に対して、歯列を奥に下げようとする方法はあまりお勧めできません。

歯並びを整える歯列矯正では改善しないケース、つまり骨格に問題を抱えているケースに対しては、まずは美容形成外科などで下顎の出っ張りをしっかりと作り骨格の問題を改善したうえで、必要ならば矯正を行う、というスタンスが正しいと言えるでしょう。

セカンドオピニオン

現在お世話になっているクリニックの治療方針に疑問を感じるようになった時は、別のクリニックでセカンドオピニオンを受けてみることを検討してみてもいいかもしれません。

自身の症状をまた違った角度から見ることができる機会になるので、セカンドオピニオンを受けた結果「主治医の言うことが正しかった」という結果になるとしても、有意義なものとなるでしょう。

適切な歯列矯正

いわゆる「町の歯医者さん」といっても、得意とする分野が異なっていることをご存知でしょうか。一般歯科、口腔外科、矯正歯科の3つに大別されます。

そして、本来は虫歯や入れ歯の治療を専門とする一般歯科が矯正治療を行っていることが、トラブルを引き起こす一つの要因になっていることもあるのです。

そういった医院では、矯正が専門ではないために「矯正=抜歯」といった安易な図式が成り立っているケースが非常に多いと言えるでしょう。抜く必要のない歯を抜くことで、望まない結果となってしまう恐れがあります。

やはり矯正に関しては、確かな経験や知識や技術のある専門の矯正歯科を選ぶことが大切だと覚えておきましょう。

 

 

関連記事→ 矯正歯科クリニックの正しい選び方とは?認定医が勧める9つのチェックポイントを紹介!

ユニゾン矯正歯科銀座6丁目なら「口元の前突と抜歯の必要性」について専門的見地から相談可能!

ここまでご覧下さった方の多くが、口元の雰囲気や突出感や歯並びに関して何らかのお悩みをお持ちだと思います。

当院では、豊富な経験や研鑽に基づき、口元を美しくしたいという患者さんの要望に対する、最適な選択肢を指し示してあげたいと考えています。

口元が突出した状態を治療するにあたり、確かな見極めがないままに安易に抜歯を選択したり、過剰に抜歯をする治療を受けると取り返しのつかない事態となってしまいます。口元の突出感を治したいのに、治療した結果、今度は口元が下がりすぎてしまう、というトラブルに陥ってしまうことは、何としても避けなければなりません。

ご自身の口元の問題を歯列矯正で理想の状態にきれいに治すためには、抜歯の必要性や必要部位を的確に見立てる力があるクリニックで初診相談を受けることが、まず第一です。

ユニゾン矯正歯科では丁寧なカウンセリングを行ったうえで、基本に忠実に、確かな見極めをもって説明いたします。


当院受付

当院診療風景


まとめ


以上、歯列矯正によって口元が下がりすぎてしまう可能性について触れ、その原因ともたらされる悪影響について説明しました。

また、そのような問題を避けるために、意識しておきたいポイントについて解説しました。歯列を正すことが顔立ちに影響を及ぼすことが知られて以降、矯正治療を受ける成人女性は増加の一途をたどっています。

しかし、100人いれば100通りの美意識というものが存在していると考えるべきで、一人ひとりの患者さんが望んだ美しさを提供することが求められています。

当院では、そのような望みを叶えるべく、日々研鑽しています。歯並びのことで悩んでいる方は、ぜひ一度相談にお越しください。

                                 

                                                

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矯正治療を受ける際に、多くの方が苦手意識をもつ歯型取り。「おえっ」となる感覚が嫌で、矯正治療を敬遠している方も多いのではないでしょうか。

本記事では矯正治療における歯型取りに焦点を当て、必要性、気持ち悪さを感じる理由、気持ち悪さを緩和するコツについて解説していきます。最後に歯型取りの最新技術「3D口腔内スキャナー」にも触れますので、ぜひ最後までご覧ください。

なお、歯型取りは歯科専門用語で「印象採得」といいますが、ここでは一般的で親しみやすい「歯型取り」で進めます。

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