歯列矯正は絶対保険適用外とは限らない!保険適用となる場合とその条件とは?

歯列矯正は絶対保険適用外とは限らない!保険適用となる場合とその条件とは?

「歯並びを綺麗にしたいけど、歯列矯正は高いんだよな…」
「確か保険適用されないんだよな…」
「全額自己負担か…」

と悩まれている方も多いはずです。

しかし、何事にも例外があるように、歯列矯正にも保険適用となる場合があることをご存知でしょうか。

その為には、それなりの条件が必要になってくるのですが、クリアすれば自己負担額が変わります。

私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。

今回は歯列矯正における保険について、理解しておきたい知識を紹介していきます。

歯列矯正は基本的に保険適用とはならない

当院診療風景

歯列矯正は決して財布に優しいとはいえないと思います。なぜなら、保険が適用されないことにより、検査代や装置代や毎月の再診料、保定期間にかかる費用などの全てが自己負担となるからです。

すなわち矯正治療は基本的に自由診療の扱いとなっているので、治療費は高額と感じるケースが多いでしょう。何故そうなるのか、より詳しく紹介していきます。

「美しさを求めて受ける施術」という認識

歯列矯正は歯並びを整えることによって「美しい見た目」を手に入れる治療であると考えられています。そのことが、保険が適用されない原因と言えるでしょう。

同じく保険が使えないものに「美容整形」があります。これもまた、ルックスを良くしたい方のための治療である為、全額自己負担となっています。

この2つを見れば分かるように「見た目を良くする」という治療は自由診療の扱いになっていて、治療費すべてが自費となるのです。

稀に歯列矯正で保険適用となるケースもある

前述した通り、歯列矯正は基本的には美容整形と同じような扱いになる為、保険適用外での治療になってしまうことを説明しました。

しかし稀なケースですが、治療を受ける理由によっては保険適用となる場合があります。

3種類のパターンがある

治療を受ける理由が美容目的ではなく「病気」の扱いとされた場合に保険が適用されます。噛み合わせが悪いことを「咬合(こうごう)異常」といい、厚労省では次の3種類のケースで保険診療を許可しています。

①「厚生労働大臣が定める疾患」に当てはまる咬合異常
②前歯3歯以上の永久歯萌出不全が原因の咬合異常(埋没歯開窓術を必要とするものに限る)
③顎変形症を治す手術の前と後に行う矯正(顎離断等の手術を必要とするものに限る)

①で挙げた「厚生労働大臣が定める疾患」は以下の通り

・唇顎口蓋裂
・鎖骨頭蓋骨異形成
・トリーチャ・コリンズ症候群
・ピエール・ロバン症候群
・ダウン症候群
・筋ジストロフィー
・ラッセル・シルバー症候群
・ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
・ベックウィズ・ウイーデマン症候群
・顔面半側萎縮症
・先天性ミオパチー
・顔面半側肥大症
・ターナー症候群
・エリス・ヴァンクレベルド症候群
・マルファン症候群
・ヌーナン症候群
・脊髄性筋萎縮症
・軟骨形成不全症
・外胚葉異形成症
・神経繊維腫症
・基底細胞母斑症候群
・プラダー・ウィリー症候群
・顔面裂(横顔裂、斜顔列及び正中顔裂を含む。)
・ウイリアムズ症候群
・大理石骨病
・色素失調症
・口腔・顔面・足趾症候群
・メビウス症候群
・歌舞伎症候群
・骨形成不全症
・クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
・ビンダー症候群
・スティックラー症候群
・小舌症
・CHARGE症候群
・ラーセン症候群
・フリーマン・シェルドン症候群
・染色体欠失症候群
・ルビンスタイン・ティビ症候群
・濃化異骨症
・マーシャル症候群
・6歯以上の先天性部分無菌症
・成長ホルモン分泌不全性低身長症
・ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群、XXXXX症候群を含む。)
・リンパ管腫
・全前脳胞症
・クラインフェルター症候群
・リング18症候群
・偽性低アルドステロン症
・ソトス症候群
・頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
・グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
・繊維性胃骨形成症
・スタージ・ウェーバー症候群
・ケルビズム
・偽性副甲状腺機能低下症
・Ekman-Westborg-Julin症候群
・常染色体重複症候群
・その他顎・口腔の先天異常(顎/口腔の奇形や変形を伴う先天性疾患による咬合異常について歯科矯正が必要な時、その都度当局に内儀の上、対象とすることができる)

引用:公益財団法人・日本矯正歯科学会( https://www.jos.gr.jp/facility )より

歯列矯正で保険適用となった場合とならなかった場合の費用感について

先の項では、顎変形症の為に手術を受けたり、先天性異常があった場合は矯正治療に保険が適用されることを紹介しました。それでは、適用されない場合に比べてどれほど負担する金額が違うのでしょうか。

その額の違いについて解説するとともに、保険を用いた矯正治療を施術できる医療機関について紹介しましょう。

金額の違いについて

健康保険が適用されると、基本的に自身の負担額はかかった医療費の3割となります。その為、歯列矯正に仮に100万円がかかったとすると、自己負担額はそのうちの3割である30万円となるでしょう。

100万円という数字は、標準的な歯列矯正にかかる費用でもありますから、適用されるか否かで70万円もの差が生まれることになります。

美容目的ではなく、咬合異常という「病気」を治すことが矯正治療を受ける理由になると、これだけの大きな金額の違いが出てくるのです。

特定の保険医療機関を選ぶ必要がある

保険適用の矯正治療は、厚労省が定めている施設基準に適合した医療機関で施術を受ける必要があることを覚えておきましょう。

どの矯正歯科が保険適用の矯正治療を行える医療機関に該当するのかを調べるには、地方厚生局ホームページへとアクセスして、サイト内検索で探すことになります。

その際「施設基準届出受理医療機関名簿」というワードで検索すれば受理医療機関が出てくるはずですので、その中から歯科のPDFファイルを探し「矯診」「顎診」と明記された機関を探しましょう。

まとめ

以上、美容目的の歯列矯正には保険が適用されないが、例外的に、先天性異常や顎変形症の手術などの為に矯正治療を受ける場合は保険が適用されることを説明し、両者の金額の差について見てきました。

改めてそれぞれの場合の自己負担額を知ると、その差に驚かされることでしょう。もちろん、日常生活に不具合をもたらす顎や嚙み合わせの病気の状態を治す場合にのみ保険は適用されるのですから、同じ歯列矯正でも、保険適用矯正は、病的な咬合異常状態にある限られた患者さんのためだけの別物と考えた方が良さそうです。

やはり見た目の美しさを追求するには、通常は、相応の矯正治療費用を全額自己負担で支払う必要がある為、矯正治療を行うかどうかは費用面で勇気ある決断となってしまう現状があります。

また、費用的な面からできれば保険矯正が適用できないかと考えている方、つまり、自分の顎のゆがみ方や歯並びの不正を矯正治療する場合、顎の手術が必要なのか、矯正治療が保険の適用になるのかどうか知りたい方もいると思います。

いずれにせよ、歯並びのことで悩みのある方は、ぜひ一度相談のために当院までお越しください。

                               

LINE 相談・予約できます。友達追加はこちらから

                        

矯正後に発生するブラックトライアングルとは?要因や自然治癒の可否も解説

矯正後に発生するブラックトライアングルとは?要因や自然治癒の可否も解説の画像

矯正後に発生するブラックトライアングルとは?要因や自然治癒の可否も解説

矯正治療について調査を進めるなかで、「施術後にブラックトライアングルが生じる可能性があること」を不安に感じる方は珍しくありません。実際に当院でも、この相談を受けることは多いです。

本記事では、矯正治療後に発生する可能性があるブラックトライアングルについて、定義・原因・自然治癒の可否・矯正前にできることを深掘りしていきます。

矯正治療を受けたいが不安を感じている人、ブラックトライアングルの発生をできれば避けたいと考えている人などは、ぜひ最後までご覧ください。

部分矯正は全体矯正よりも簡単で低価格?矯正の専門医が両者を比較します

部分矯正は全体矯正よりも簡単で低価格?矯正の専門医が両者を比較しますの画像

部分矯正は全体矯正よりも簡単で低価格?矯正の専門医が両者を比較します

費用や期間などにおいて、比較的楽に矯正ができると思われている部分矯正。「部分矯正は全体矯正よりも楽に治療できる」とお考えのもと、相談や治療計画のお問い合わせをいただくことは非常に多いです。

しかし、部分矯正は一概に”楽”であると断定できません。むしろ全体矯正の方が、費用やリスクの面でメリットが大きい場合もあります。

本記事では、部分矯正と全体矯正を「期間」「費用」「抜歯の有無」「治療できないケース」「リスク」の観点から徹底比較していきます。

部分矯正であれば全体矯正よりも負担が軽いとお考えの方や、部分矯正のメリット・デメリットを知りたい方などは、ぜひ最後までご覧いただき、そのうえでどちらにするかをご検討ください。

マウスピース矯正とは?デメリットや矯正ができない事例を解説

マウスピース矯正とは?デメリットや矯正ができない事例を解説の画像

マウスピース矯正とは?デメリットや矯正ができない事例を解説

ワイヤー矯正とは異なる魅力を有するマウスピース矯正。近年、学生、社会人、女性を中心に人気を集めています。

本記事では、マウスピース矯正に関して、メリット、デメリット、矯正ができない事例について解説していきます。「マウスピース矯正を検討している」「マウスピース矯正ができるか不安」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

矯正治療の歯型取りが気持ち悪い!理由と吐き気の対策を紹介【歯型を取らない方法も紹介】

矯正治療の歯型取りが気持ち悪い!理由と吐き気の対策を紹介【歯型を取らない方法も紹介】の画像

矯正治療の歯型取りが気持ち悪い!理由と吐き気の対策を紹介【歯型を取らない方法も紹介】

矯正治療を受ける際に、多くの方が苦手意識をもつ歯型取り。「おえっ」となる感覚が嫌で、矯正治療を敬遠している方も多いのではないでしょうか。

本記事では矯正治療における歯型取りに焦点を当て、必要性、気持ち悪さを感じる理由、気持ち悪さを緩和するコツについて解説していきます。最後に歯型取りの最新技術「3D口腔内スキャナー」にも触れますので、ぜひ最後までご覧ください。

なお、歯型取りは歯科専門用語で「印象採得」といいますが、ここでは一般的で親しみやすい「歯型取り」で進めます。

部分矯正ができない例とは?判断基準について矯正歯科の認定医が解説!

部分矯正ができない例とは?判断基準について矯正歯科の認定医が解説!の画像

部分矯正ができない例とは?判断基準について矯正歯科の認定医が解説!

「私は数本の歯が乱れているだけだから部分的な矯正で済ませたいな」といったように、気になる歯が1〜3本程度ならば部分矯正で治せるのではないかと考えている人も多いでしょう。 しかし乱れた生え方をして...

叢生の矯正とは?原因と放置するデメリットや矯正治療法について紹介

叢生の矯正とは?原因と放置するデメリットや矯正治療法について紹介の画像

叢生の矯正とは?原因と放置するデメリットや矯正治療法について紹介

「歯並びが不揃いなのが気になるから、治したい」と考えている人は、見た目や機能性の問題を感じている場合が多いでしょう。 私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。...

下の歯だけ矯正することは可能?部分矯正の特徴やメリット・デメリットについて

下の歯だけ矯正することは可能?部分矯正の特徴やメリット・デメリットについての画像

下の歯だけ矯正することは可能?部分矯正の特徴やメリット・デメリットについて

「下の歯に気になる部分があるから、そこだけを矯正したい」といったように、部分的に歯列が乱れていることを気にする人もいるでしょう。 その一部分だけを治すために、大掛かりな装置を取り付けて治療をする...

開咬(オープンバイト)を矯正で治す!治療の種類・方法・費用・期間を矯正歯科認定医が解説

開咬(オープンバイト)を矯正で治す!治療の種類・方法・費用・期間を矯正歯科認定医が解説の画像

開咬(オープンバイト)を矯正で治す!治療の種類・方法・費用・期間を矯正歯科認定医が解説

開咬(オープンバイト)とは、上下の歯を噛み合わせた時に奥歯は噛み合っているのに前歯に隙間が出来てしまい、キチンと閉じない状態のことを指します。 私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多く...

歯列矯正で面長が治る?出っ歯や受け口の治療による面長の印象の変化について

歯列矯正で面長が治る?出っ歯や受け口の治療による面長の印象の変化についての画像

歯列矯正で面長が治る?出っ歯や受け口の治療による面長の印象の変化について

みなさんはどういった顔立ちの人を「美人」だと感じますか。このように問いかけるのは、美しいと感じる感覚も時代とともに変化することを知ってほしいからです。 江戸時代の浮世絵の様に、ある時代までは面長...

ガミースマイルの治し方を解説!矯正治療で治るガミースマイルの原因を紹介

ガミースマイルの治し方を解説!矯正治療で治るガミースマイルの原因を紹介の画像

ガミースマイルの治し方を解説!矯正治療で治るガミースマイルの原因を紹介

「ガミースマイル」とは、笑ったときに上の前歯の歯肉が過剰に見えすぎてしまう状態を言います。元々は歯科用語でしたが、多く知られるようになりました。 最近になってますます注目されているこの症状は、見...

歯並びが悪いことによる影響とは?その原因と歯並びをよくする治療方法を紹介

歯並びが悪いことによる影響とは?その原因と歯並びをよくする治療方法を紹介の画像

歯並びが悪いことによる影響とは?その原因と歯並びをよくする治療方法を紹介

「私は歯並びが悪いから、その問題を何とかしたい」と考えている人も、自身の症状がどれくらい重症なのかは把握できていなかったりします。 患者さんの歯列というのは一人ひとり本当にバラバラですから、専門...

歯列矯正で横顔が変化する?理想のEラインを実現する為に必要なこととは何か

歯列矯正で横顔が変化する?理想のEラインを実現する為に必要なこととは何かの画像

歯列矯正で横顔が変化する?理想のEラインを実現する為に必要なこととは何か

歯列矯正によって横顔のコンプレックスを解消される患者さんは意外と多くいらっしゃいます。 フェイスラインを美しくしたい目的に対して歯の矯正が効果的だとしたら、これを見逃す手はありませんよね? 私は...