歯並びが悪いことによる影響とは?その原因と歯並びをよくする治療方法を紹介
「私は歯並びが悪いから、その問題を何とかしたい」と考えている人も、自身の症状がどれくらい重症なのかは把握できていなかったりします。
患者さんの歯列というのは一人ひとり本当にバラバラですから、専門家である歯科矯正医の診察を受けないと、本当のところは分かりません。
そのことを理解してクリニックを訪ねてくれる方はまだしも、セルフジャッジでなんとなくやり過ごしている潜在的な患者さんも多いことでしょう。
私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。
今回は、歯並びが悪いことによる影響やその原因、治療法について見ていきましょう。
悪い歯並びの例
この項では、どのような歯並びだと悪い歯並びとして見なされるのか、いくつかの症例を紹介しましょう。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の前歯が前方へと角度がついて生えていたり、上顎の歯列自体が前方へと出ている状態のことです。いわゆる「出っ歯」と呼ばれる症状で、特に前歯がうまく噛み合ってくれません。
下顎前突(かがくぜんとつ)
理想的な歯列は下に対して上の前歯が被さっている状態です。しかし、下顎前突と呼ばれる症状は、いわゆる「受け口」という症状で、下顎が出ているために下の前歯の方が前方へと出てしまっています。
上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)
上下の歯列が揃って前方へと出ている状態です。遺伝によって骨格を受け継いでしまう場合もあれば、口内から歯列を舌で押す癖などで発生する場合もあります。症状が重いと口を閉じるのが難しく、口呼吸になりがちです。
叢生(そうせい)
互いの歯がひしめき合うように重なって生える状態を指します。いわゆる「八重歯」「乱ぐい歯」のことで、どれだけ丁寧にブラッシングをしても、歯ブラシの届かない箇所が出来てしまう問題があります。
開咬(かいこう)
「オープンバイト」とも呼ばれる症状で、上下の歯を噛み合わせているのにも関わらず、前歯などが開いて隙間が出来てしまう状態のことです。食物を噛み切ることが難しかったり、口が開いたままになりやすいでしょう。
空隙歯列(くうげきしれつ)
いわゆる「すきっ歯」と呼ばれる状態です。歯と顎のサイズが合っておらず、顎に対して歯が小さかったり、歯のサイズは普通でも顎が大きかったりすることで、歯間に隙間ができてしまいます。
過蓋咬合(かがいこうごう)
歯の噛み合わせが深く「ディープバイト」とも呼ばれています。上側の前歯が下側に大きく被さり、下側の歯列を覆うような状態です。症状が重いと、下の前歯が上の前歯の裏側にある歯茎を噛んでしまうことも。
交叉咬合(こうさこうごう)
「クロスバイト」とも呼ばれ、奥歯の噛み合わせが上下逆になっている状態です。先天的に上下の顎のバランスが乱れているケースと、後天的に横向きで寝るなどの癖でなる場合があります。
歯並びが悪くなってしまう原因
歯並びが悪い原因には、いくつかの要素が挙げられるでしょう。まず、顎まわりの骨格を親から受け継いで歯並びが悪くなる遺伝的要素が考えられます。先天的なものなので、仕方ないのかも知れません。
次に考えられるのは指しゃぶりや舌の癖など、後天的な理由で歯列が乱れるケースです。他にも頬杖や歯ぎしりなど、何気なく身についた癖が悪い歯並びの要因になり得ることを覚えておきましょう。
また悪い癖が身に付いていなくても、食生活で歯並びが乱れる場合があります。子供の頃から柔らかいものばかりを食べていると、顎の成長不足を引き起こして歯が綺麗に並ぶスペースを確保できません。
このように「遺伝的要素」「癖」「食生活」など、悪い歯並びになるのはいくつかの原因が考えられます。またそれらの要素が複合的に重なることで、さらに症状を悪くしてしまうケースもあるでしょう。
歯並びが悪いことでどんな影響がある?
「たかが歯並びが悪いだけで、どうしてそんなに悩んでいるの?」と感じる方もいるかも知れません。しかし、この問題を軽く考えないで欲しいのです。実際のところどういったデメリットがあるのか、考えてみましょう。
口内環境が一向に良くならない
ガタガタに歯が乱れて生えていると、歯ブラシの届かない箇所が出来てしまうでしょう。その部分に歯垢が溜まってしまい、虫歯や歯周病の原因となってしまいます。
また口呼吸になってしまう人も多く、そういった状況が口内に菌を繁殖させることを後押ししてしまうのです。それと同時に口呼吸だと、風邪をひきやすくなるでしょう。
さらに直接的にそういった病気を発症しなくても、磨き残しがあることによって口臭がしてしまう問題もあり得ます。自身で気付いた方なら対策も出来ますが、口臭がするという意識がない人も多いでしょう。
そうなると働いている方は「社会人としてのエチケットがない」といったような印象を相手に与えかねません。悪い歯並びは口内環境を乱れさせるだけでなく、社会的信用にも関わってくるのです。
身体への影響
歯並びが悪い状態だと、噛むときにうまく力を込めることができません。噛む行為は脳神経と深い関わりがあるのですが、噛む力が歯と脳への刺激が不足して痴呆症の原因ともなってしまいます。
それと同時に、あまり噛めないことから咀嚼を十分にしないまま食物を飲み込むような食べ方になり、消化器官にかかる負担が大きくなるでしょう。
また、すきっ歯などの症状を持っている方は、空気が隙間から漏れてしまう為に発音がしづらい問題が発生することもあります。
心理的な影響
誰だって自身の姿が美しくありたいと考えることは、当然のことです。しかし、歯並びが悪いことが原因で顔の輪郭にまで影響を及ぼしている人は、自分に対して自信を失いがちになってしまいます。
「歯列さえ整っていればもっと美しくなれるのに…」といったネガティブな感情を抱くなど、基本的なマインドのあり方が負の方向性になってしまっている人が数多く存在しています。
また、笑うことによって歯列を人前にさらすことに、恐怖心にも似た感情を抱いてしまうケースも考えられます。笑いたいのに笑顔を見せられないというのは、心理的に大きな負担となるでしょう。
悪い歯並びの治し方を紹介
実際に歯並びが悪いと気付いている人も、その症状には「度合い」というものがあります。問題を深刻に捉えている方が実は軽度だったり、歯列の乱れを軽く考えている人が重い症状だったりするものです。
ここでは軽度のものから重い症状まで、順を追ってその治療法を紹介しましょう。
部分矯正
前歯が前突しているのを治療したり、八重歯などで重なっている歯を綺麗に整えたりと、気になる部分だけを治す治療法になります。
歯列矯正のなかで最も症状の軽い人に適用されるもので、費用は安く済むでしょう。しかも、治療期間は半年〜1年と短期間になっています。治療に用いる器具としてはワイヤー型やマウスピース型があります。
全体矯正
歯列全体を動かす治療法なので、部分矯正では実現できない「噛み合わせの改善」というものが期待できます。食材を選ばず、どんなものでも気にせず食べられるようになる恩恵は大きいでしょう。
ただし、治療費はそれなりに掛かります。また、治療期間も2~3年と長くなるでしょう。治療用の器具はワイヤー型とマウスピース型に分かれますが、特にワイヤー型はより目立たない形になったりと、進化しています。
抜歯をする矯正
症状が軽いと、コンマミリ単位で一本ずつの歯を削って歯を動かすスペースを作り出すのですが、歯を大きく動かさないと整った歯列を実現できないケースもあるでしょう。
ガタガタに生えていたり、上下の歯が前後で噛み合っていないといった要素に加えて、前歯に極端な角度がついていたり、口元自体が前突している状態を総合的に判断して「抜歯」という選択肢が入ってきます。
治療に用いる器具としてはワイヤー型が一般的だと言えるでしょう。
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まとめ
以上、歯並びが悪いことで受ける影響について触れ、どのような状態が良くないものとされるのか説明し、その治し方について解説しました。
全く関係のない部位のツボを押すことで、深刻な症状が改善したりするように、身体は意外な部分でつながっているものです。
「たかが歯の生え方で」と軽く見ている人もいるかも知れませんが、重大な病気をもたらす可能性があるので、放置するのは良くありません。
自身の体に一度しっかりと向き合い、歯列に問題があると感じたならば、迷わず矯正歯科へと足を運びましょう。
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