歯列矯正の期間ってどのくらい?長引かせない為におさえておきたいポイントとは

歯列矯正の期間ってどのくらい?長引かせない為におさえておきたいポイントとは

「歯並びを直したいけど、治療にはものすごく時間が掛かりそうで…」と、歯列矯正を終えるまでの期間を理由に、治療を避けている方もいるでしょう。

私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。歯並びを治すことによって、きれいな歯並びを手に入れるだけでなく、顔立ちや口元の雰囲気まで改善できる場合があります。初回のカウンセリングで患者さんと接する際には、本心で話してもらえるように常に意識しています。どこが気になっているのかという話から始まり、なぜ矯正をしようと思ったのか、なぜ当院に来ようと思ったのか、矯正をしてどうなりたいのか、毎月の通院はストレスにならないのか、費用はどれくらいを考えているのか、それはどうやって支払いたいかということまで、本音の部分を話していただき、支払いのしやすさにも考慮した、患者さんに寄り添った治療を心がけています。

実際に色々な治療法がありますが、そのどれもが歯をゆっくりと動かすものです。なぜ時間を要するのかと問われると「歯の構造的な問題」と答えるしかないのですが、それでは納得できない人もいるかも知れません。

そういった患者さんに対して歯科医師ができることは、せめて治療を長引かせない方針を打ち出すことしか無いでしょう。今回は矯正にかかる時間について詳しく見ていきましょう。

歯列矯正の期間はどのくらいかかるの?

「歯科医師から告げられた治療の期間が長すぎて、途中で中断したくならないか心配」といったように歯列矯正の期間は長期に渡ることが知られています。

「そもそも、どうして長期になるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。ここでは矯正を終えるのに要する年月について説明していきます。

矯正完了にはどの程度の期間が必要?

矯正の開始から終了までおよそ半年~3年といった具合に、大きな開きがあります。これは、患者さんの歯列の乱れ具合によって変わってくる為です。

歯並びがひどい状態だとそれだけ長期になる一方で、部分的に気になるといった程度であれば治療期間は短くてすむでしょう。

矯正を終えると保定期間に移行

矯正が歯並びを整える作業だとすると、その後に待っているのが「保定(ほてい)」と呼ばれる処置です。

保定とは、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」という現象を装置で防ぎ、矯正後の美しい状態で固定する為の治療のことです。

これを「保定期間」といい、およそ1~2年の歳月を要します。

つまり長くかかる人は矯正治療に3年、それに加えて保定に2年と合計5年もかかってしまうのです。

しかしこれはあくまでも一般論でその方の元の歯並びの状態や歯の動きやすさなどによって個人差があります。

歯を動かす速度には限界がある

これほど長期に渡る理由は「ゆっくりとしか歯は動かせないから」ということに尽きます。口内に設置した装置で小さな力をかけて、徐々に動かす方法を採用します。

「大きい力をかけて、より早く治療を終えられないのか」といった声も聞こえてきそうですが、そうはできないワケがあります。

歯が動く仕組みは、動かしたい方向を塞いでいる骨に空間ができて、そこに歯が移動し、移動によってできた隙間は骨が埋めるということの繰り返しです。

このサイクルを壊すような大きな力を加えてしまうとどうなるでしょう?最悪の場合「歯髄壊死」といって歯が死んでしまう可能性がありとても危険です。

歯列矯正の期間は種類によっても異なる

一人ひとりの患者さんの歯並びや骨格の状態はそれぞれ異なり、治療方法もすべての患者さんですべて同一というわけではないので、治療の期間も患者さんごとに多少変わってきます。

一般的にどれくらいの長さを要するのか、歯列矯正の種類ごとに分けて紹介しましょう。

唇側からの矯正

「ブラケット」と呼ばれるパーツを歯の表面に付けて、そこにワイヤーを通して矯正する、最もオーソドックスな方法になります。歯列を全体矯正するのに1~3年要します。

舌側矯正

歯の裏側(舌側)にブラケットを装着して、矯正する方法です。唇側だと装置が目立ってしまう問題を解決する治療法で、全体の矯正に要する年月は同じく1~3年になります。一般的な唇側からの矯正と比べ治療期間が長引くことが多いです。

マウスピース矯正

無色透明の樹脂性マウスピースを毎日20時間以上着けておく治療法です。従来の矯正装置と異なり、取り外しができるので、食事や歯磨きの邪魔になりません。全体を矯正するケースで1~2年かかります。

部分矯正(ワイヤー矯正およびマウスピース矯正)

気になる前歯の出っ張りや八重歯、すきっ歯といった部分的な矯正は、マウスピースおよびワイヤー矯正で対応します。治療は数ヶ月~1年6ヶ月と、全体を矯正する時に比べてやや短くなるでしょう。

歯列矯正の期間を長引かせない為にできること

当院診療風景

中には「治療を終えるまでにそれほどの年月がかかってしまうのは我慢できない…」という方もいることでしょう。

なるべく長引かせない為にできることを以下で紹介していきます。

歯科矯正用アンカースクリューを用いる

ワイヤー矯正は歯にブラケットを付けて歯と歯の間に動かす力を発生させる為、目的の歯だけに力を加えることができず、それぞれの歯が相対的に動いてしまいます。その為、治療の速度が上がりません。

そこで、歯科矯正用アンカースクリューを用いて矯正治療を行う場合があります。これはインプラントアンカー(小さなねじのようもの)を歯茎の骨に植立し、そこを固定源として歯を動かす治療法です。

歯茎の骨に植立したアンカーという絶対的な固定源があることで、そこを起点に動かしたい歯だけに直接力を加えられる為、治療にかかる時間の短縮が期待できるのです。

取り外しできるタイプは装着時間を守ること

カウンセリングで治療方針が導き出されますが、その際にお伝えする治療期間は、矯正装置が想定通り機能することを前提とした標準的な治療期間をお示しする場合がほとんどです。

マウスピースを用いた矯正を行うと決定したら、1日に20時間以上もの間、マウスピースを装着していなくてはなりません。

装着時間を守らないと望んだ結果が思うように得られず、結果としてカウンセリング時に伝えられた期間よりも治療の期間が長引いてしまうでしょう。

歯周病や虫歯に気をつけよう

ワイヤーでの矯正は、装置を一旦装着すると外せません。歯の表面に付いたブラケットが邪魔をして、歯磨きのブラッシングが届かなかったり、逆に強い力で磨きすぎるところが出てきます。

そのことによって虫歯や歯周病が発生してしまうと、矯正治療は一旦休止させて、虫歯および歯周病の治療が優先されることになります。

歯科医師から指導された歯の磨き方を守って、矯正以外の問題を引き起こさないように注意することが大切です。

保定の時に怠けてしまうのはNG

後戻りを防ぐ為に、保定期間には「リテーナー」と呼ばれる装置を装着します。取り外し可能なものと不可能なものがありますが、注意すべきは取り外しができるタイプを用いる場合です。

装着する時間を徹底しないことにより、せっかく整った歯列が元の状態に戻ってしまうこともあります。

歯科医師の指導をしっかりと聞いて、矯正後の美しい歯並びをキープするよう努めましょう。


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まとめ

以上、矯正する部位や方法の違いによって、歯列矯正にかかる期間が変わってくることを解説してきましたが、何故長い年月を要するのか、その理由が分かってもらえたでしょうか。

治療期間を短縮する方法や、無駄に長引かせない為にできることも説明してきましたので、なるべく歯科医師から受けた指導を守るようにしてください。

症状を改善させる為には、歯科医師の力だけで無く患者さんの日々の努力も欠かすことができません。お互いの信頼・協力の上で治療が成り立つという認識を持っていただけたら幸いです。

                           

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