八重歯は矯正で治せる!治療の種類・方法・費用・期間を矯正歯科認定医が解説
大人になってから「八重歯が気になるから矯正したい」と考えている人はとても多いでしょう。八重歯は、前から3番目に生えている犬歯が外側にはみ出している状態です。
日本では八重歯のことをそれほどネガティブに捉えないかも知れません。しかし欧米では、犬歯の目立つ様子が吸血鬼の歯列を連想させるため、良いイメージを持たれません。
そのため、歯列を綺麗に整えることが一般的になっています。今回は「八重歯のために歯並びが乱れた印象を相手に与えないか」と悩んでいる人に向けて、八重歯の矯正治療について詳しく解説しましょう。
八重歯になる原因とは?
歯列が治まっているU字型の土台は、その大きさが顎のサイズと関係しています。顎が小さいと土台も小さくなることが考えられます。土台に対して生えようとする歯のサイズが大きいとどうなるでしょうか。
答えはズバリ、土台に歯が収まりきれずに歯列が乱れた状態になってしまうのです。そのなかでも、前から3番目の歯である「犬歯」が外側へと追いやられた状態が「八重歯」で、矯正治療の対象となります。
また他の原因としては、歯が乳歯から永久歯に生え変わるタイミングで、犬歯よりも奥にある臼歯の永久歯が先に生えてしまうことが挙げられるでしょう。犬歯の生えるスペースが無くなるため八重歯になってしまいます。
また、歯の本数は親知らずを含めて32本生えていますが、歯茎から出てこないで内部に埋まっている歯が存在するケースも。前歯付近に埋まったままの歯があると、犬歯が生える邪魔になってしまい八重歯になるのです。
八重歯を放置するデメリット
歯列が乱れた状態の八重歯を矯正せずに放置するデメリットとして最初に挙げられるのは、歯磨きの不便さです。八重歯が邪魔をしてブラシが行き届かず、雑菌が溜まってしまうケースが考えられるでしょう。
さらには口呼吸になりがちなことから、唾液が乾きやすい状態に。その結果、菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病が引き起こされる恐れがあります。また、口臭の原因にもなってしまうことも。
また、犬歯は歯を噛み締める時に奥歯に掛かる力を分散してくれる役割を果たします。八重歯の状態だと、その機能が失われるので、奥歯がすり減ってしまう恐れがあるでしょう。
そして、犬歯が外側に飛び出ている状態なので、口内の粘膜を刺激する恐れがあります。口内炎が出来やすい状態になり、常に不快感を抱く場合も考えられるのです。
八重歯を治すための矯正方法
「八重歯」とひとことで言っても、その症状の重さは患者さんによって異なります。そのため、最適な治療法も人によって違ってくるでしょう。八重歯の矯正にはどのようなものがあるのか紹介します。
全体矯正
八重歯を歯列のなかに整った状態で収めるために、歯列全体を動かす必要性がある場合が考えられます。すべての歯を動かすことから、この治療法は「全体矯正」と呼ばれています。
全体矯正で用いる手法としては、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の両方が考えられるでしょう。
部分矯正
八重歯とその周囲数本の歯だけを動かせば歯列が綺麗になる場合、目的の歯だけに働きかける「部分矯正」と呼ばれる治療法が採用されます。これもまた、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の両方があります。
また、効率的に歯へ働きかける目的で「アンカースクリュー」と呼ばれるネジ式の突起物を歯茎内の骨に装着することも。絶対的な力の固定源になるので、ワイヤーで目的の歯と繋ぐことで治療効果をアップさせます。
ワイヤー矯正
それぞれの歯に金属製ワイヤーの通り道となる「ブラケット」という部品を接着し、ワイヤーを通します。ワイヤーの締め付ける力を利用して、理想的な歯列へと歯を動かすのです。
現在の矯正治療で行われている技術のうち、最も古い治療法なので実績があり、医療ミスが起こりにくい点が挙げられます。ただし、装置を取り付けると治療が完了するまで取り外せません。
抜歯・非抜歯を問わず幅広い症例に対応するので、八重歯の矯正にも大いに活用されています。
マウスピース矯正
マウスピースを段階的に取り替えていくことで、理想とする歯列へと歯を動かしていく治療法です。ワイヤー矯正と異なり、食事や歯磨きの時には装置を取り外せるメリットがあります。
また、透明の樹脂製なので目立ちにくい点も好まれています。ただし、ワイヤー型も目立ちにくい装置が出てきているので「目立ちにくさ」という点での優劣は無くなってきているでしょう。
マウスピース矯正は、歯を大きく動かす治療に不向きと言われていましたが「アタッチメント」と呼ばれる補助器具を追加することで弱点を克服しました。抜歯した上で歯を大きく動かす治療にも対応できるようになっています。
矯正で八重歯を抜くの?
矯正についてあまり詳しくない患者さんは「八重歯が邪魔なのだから八重歯を抜歯するのだろう」と思い込んでいる方もいることでしょう。
矯正には抜歯する場合と非抜歯での治療に大きく分かれます。そして抜歯の際に抜く歯というのは、犬歯よりもさらに奥にある「小臼歯」と呼ばれる歯になります。
つまり、歯を抜く必要がないパターンと抜歯するケースに分かれたとして、抜歯をするとしても八重歯を抜くとは限らないことを覚えておきましょう。ここでは、それぞれの矯正治療法について解説しましょう。
八重歯の抜歯
八重歯は寿命の長い歯とされているので、抜歯するのは他の歯の方が良いとされています。しかし、歯の重なりによって手入れが行き届かず、八重歯が歯周病になる恐れのある場合は八重歯を抜くことになるでしょう。
また、八重歯を抜歯すると全体の噛み合わせが良くなると判断された場合は八重歯を抜歯します。これは八重歯を除く歯が綺麗な歯列をしているケースに当てはまるでしょう。
小臼歯の抜歯
一般的に抜歯する歯といえば、「小臼歯」です。小臼歯を抜くことで八重歯が収まるスペースを作り出し、歯列を整える矯正治療が行われます。
この小臼歯の抜歯矯正は、八重歯の周囲にある歯の手入れが行き届いておらず、歯周病を引き起こす恐れがある場合に採用されます。つまり八重歯自体は健康で、その周囲の歯が弱っている時に用いられる手法と言えるでしょう。
抜歯をしない
抜歯をしない治療法も考えられるでしょう。一本ずつの歯をわずかに削っていくことで、トータルすると八重歯を綺麗に収めるスペースが作り出せる手法を「IPR」と言います。
また、歯列はU字型の土台に収まっていることは既に述べました。その土台の曲がり具合を側方へと広げる「側方拡大」をすることで、八重歯を収めるスペースを作り出せる場合もあります。
八重歯矯正治療の費用と期間
八重歯を矯正治療したい人にとって気になるのは、やはり費用ではないでしょうか。審美目的の歯列矯正は保険が効かず、すべて自費となるので決して安くはありません。
また、治療にかかる期間も気になるところでしょう。症状の特徴や重さに合わせて治療方法が変わってくるので、期間に関しては患者さんによってバラバラです。以下に目安となる費用と治療期間を紹介します。
八重歯の矯正にかかる費用
それぞれの矯正治療法で費用が変わってきます。
部分矯正(ワイヤー矯正) | ¥220,000~¥858,000 |
部分矯正(マウスピース矯正) | ¥462,000~¥726,000 |
全体矯正(表側からのワイヤー矯正) | ¥858,000~¥990,000 |
全体矯正(マウスピース矯正) | ¥726,000~¥957,000 |
八重歯の矯正にかかる期間
部分矯正と全体矯正で、治療にかかる期間が変わってきます。
部分矯正 | 数ヶ月 |
全体矯正 | 1~2年 |
まとめ
以上、八重歯になる原因と放置するデメリットについて触れ、矯正方法と抜歯について解説し、治療に必要となる費用と期間について紹介しました。
八重歯に限ったことではないのですが、歯列の乱れは見た目だけでなく、口内環境や噛み合わせなどにも影響を及ぼすので、思い切って治療してしまうことをお勧めします。
犬歯が理想の位置に収まってくれることで、きっと「これまでの苦労はなんだったのか」と思えるに違いありません。八重歯のことで悩みを抱えている方は、ぜひ一度、相談にお越しください。
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