インビザラインで抜歯をするケースを紹介!抜歯ありの矯正治療の注意点とは?

インビザラインで抜歯をするケースを紹介!抜歯ありの矯正治療の注意点とは?

マウスピースによる歯列矯正は、抜歯を伴うような歯を大きく動かす治療には不向きであるという認識が広まっています。

その為、インビザラインも歯を抜くような重い症状の治療は出来ないと考えている方もいるかもしれませんが、その認識は誤っていると言えるでしょう。

実際のところは、抜歯を必要とする重い症状にもインビザラインによる治療は有効です。今回はそのようなケースについて、多角的な視点から考えてみましょう。

インビザラインで抜歯が必要なケースとは?

インビザラインでの矯正において、抜歯が必要と診断された患者さんのなかには「手軽な治療で治ると思っていたから、歯を抜くのに抵抗がある」と考えている方もいるでしょう。

しかし、適切な歯列矯正を行う為に歯を抜くことが必要になるケースは確実に存在しています。そして、インビザラインはそういった症例にしっかりと適応します。

この項では、どのような症状の時に抜歯の必要があるのか、順を追って見ていきましょう。

親知らずが矯正の邪魔になるとき

親知らずは前から数えて8番目の、最も奥に生えている歯のことです。日本人は顎のサイズが小さいので、親知らずが真っ直ぐに生えてくれず、前の歯に寄りかかるような生え方をするケースが非常に多いです。

インビザラインはマウスピースで歯列を動かす治療法なので、斜めに生えているような親知らずに力を加えることが出来ません。また、奥へと歯を動かしたいと考えている時に邪魔になるケースも考えられます。

親知らずが真っ直ぐに生えており、対面する上下の歯としっかりと噛み合っているケースを除いては、抜歯することがあります。

出っ歯・叢生を治療するとき

上顎の歯列全体が大きく前方へと出ている状態を「出っ歯」と呼びます。また、単に前歯が前方へと角度がついて生えている場合も出っ歯と診断されるでしょう。前歯に角度がついたものは、その角度を正してあげれば治ります。

しかし前歯の角度の問題ではなく、歯列全体が突き出ている場合は抜歯をして、空いたスペースに歯列を引っ込める作業が必要になるでしょう。その為「第一小臼歯」と呼ばれる前から4番目の歯を抜くことになります。

また、歯の土台に対して歯のサイズが大きいと、お互いがひしめき合うように生えてしまい、ガタガタの歯列になってしまいます。この症状を「叢生」と呼びますが、過密状態なので歯を動かすスペースがありません。

その為、このケースにおいても抜歯を必要とすることが多いです。それに際して抜く歯は、出っ歯のケースと同様に第一小臼歯となるでしょう。

虫歯・歯周病の歯があるとき

虫歯がかなり進行してしまうと、痛みを感じないように神経を抜かないといけないケースが出てきます。また歯周病もひどい症状になると、歯がグラグラになってしまって頼りない状態になってしまいます。

そのような歯に対して、インビザラインで矯正の力を加えても望むような治療の結果は得られないでしょう。そればかりか、重度の歯周病を患っていると歯列矯正によって歯が抜け落ちる恐れがあります。

その為、歯周病の症状が重い歯に対しては事前に抜歯をすることになるでしょう。歯がしっかりと根を張るように生えていてこそ歯列矯正の効果が生まれるので、その条件に合致しない歯は取り除くケースがあるのです。

抜歯をしなくてもインビザライン矯正ができるケース

先の項を読み進めた方は、インビザラインの矯正において抜歯が必ずセットになっていると感じた人もいるかも知れません。しかし、歯を抜く必要のないケースも存在しています。

患者さん一人ひとりの症状によって、抜歯の必要/不要というものは変化することを覚えておきましょう。そこで「抜歯が不要な人はどうやって歯を動かすスペースを確保するのか」という疑問が出てくるかも知れません。

この項では、歯を抜かない矯正のやり方について解説しましょう。

歯をわずかに削って隙間を作るIPR

歯にはエナメル質という層があって、1.5〜2mmの厚みで歯をコーティングするようになっています。そのエナメル質をわずかに削ることによって、歯を動かすスペースを作る手法が「IPR(ディスキング)」です。

それぞれの歯を約0.3mmずつ削っていくと、トータルで歯を一本抜いたのと同じくらいのスペースを生み出せるでしょう。その為「健康な歯は抜きたくない」と考えている人でも矯正を受けられる手法となっています。

歯の土台を拡張する

歯が並んで生えている様子を見てみると、U字型に並んでいることが分かるかと思います。このU字型は、歯の生えている土台自体がそのような形状をしている為に、自ずと歯の生え方もそうなっていると言えるでしょう。

そこで本題に戻るのですが、抜歯をせずに歯を動かすスペースを作りたいと考えた時に、この土台自体を外側へと拡張する方法があるのです。土台を外へと拡張すると、お互いの歯に隙間が生まれてくれます。

奥歯をさらに奥へと移動させる余裕がある

私たちの歯の生え方は「歯の生えている土台のU字型がそうなっているから」といったように、歯を収める土台によるものであることが大きな部分を占めています。

その為、このU字型の土台に、歯をさらに後方へと動かす余裕がある場合は、抜歯をせずとも歯を動かすことが出来るでしょう。最も奥に生えている歯をさらに後方へと移動させることで、スペースが生まれるのです。

インビザラインの抜歯に関する注意点

矯正をするのに必要なスペースの生み出し方が色々と存在していることで、インビザラインが必ずしも抜歯を必要とする治療法ではないことが分かってもらえたと思います。

それでも抜歯が必要なケースが存在しているので、この項では「歯を抜くにあたってどのようなことに注意すれば良いか」といった点について、具体的に考えていきましょう。

抜歯の期間・痛み

インビザラインで歯列矯正をする時に、どういったタイミングで歯を抜くのかという部分を知っておくと良いでしょう。親知らずや虫歯・歯周病など、治療の妨げとなるものについては矯正前に歯を抜きます。

また、歯科医が厳密に「抜歯」という行為を述べる場合、それは親知らずを抜くことではありません。主に前から4番目の歯である第一小臼歯を抜くことを指します。

そういった処置をする場合においても、インビザラインによる治療の前や、治療開始序盤に行われるでしょう。そして抜歯に伴う痛みに関してですが、基本的に処置した後は腫れてしまうことがあります。

その腫れ方には個人差があるので、痛みの期間は患者さんによってバラバラなのが実状です。あまりにも痛みが激しい場合には、痛み止めの薬を服用してください。

抜歯後の過ごし方

抜歯した際に歯科医から数日間の過ごし方について指示があるかと思います。具体的には飲酒を避け、長風呂をしないように意識するよう指示されるでしょう。

加えて、激しい運動をせずに喫煙もなるべく我慢することが推奨されるはずです。総じて、患部が腫れている状態なので体に負担を掛けるような行為はやめるようにと、指示を受けるでしょう。

ワイヤー矯正の併用で治療の効率が上がる

インビザラインは微弱な力で少しずつ歯を動かしていく治療法です。その為、歯を抜くことで出来たスペースを埋めるように歯を大きく動かす場合、スピードの面においてワイヤー矯正にはかないません。

最近では、大きく歯を動かすことのできるワイヤー矯正とインビザライン矯正を組み合わせた治療を行うクリニックもあります。大きく動かす部分はワイヤーで、細やかな部分はインビザラインでといった具合にです。

このように、それぞれが得意とする治療法を組み合わせて歯列矯正を行うケースがあることを覚えておきましょう。

まとめ

以上、インビザラインで歯列を矯正するにあたって抜歯を必要とするケースを紹介しつつ、不要なケースに触れ、歯を抜いた際の注意点について解説しました。

インビザラインはマウスピースを用いる治療法であることから、苦手とする治療法があると誤解されがちなのですが、実際のところはかなりの症状をカバー出来ます。

この治療法は当院でも導入しているので、この手法を用いての歯列矯正を検討している方は、ぜひ一度相談にお越しください。

                           

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