歯の噛み合わせが良い状態ってどういうこと?歯列矯正の仕組みとチェックしておきたい噛み合わせの問題

歯の噛み合わせが良い状態ってどういうこと?歯列矯正の仕組みとチェックしておきたい噛み合わせの問題

歯の噛み合わせが悪いと言われている人のなかには、「良い嚙み合わせとはどういった状態なの?」と、疑問に感じている方もいるかも知れません。

悪い状態と診断された人にとっては、これまでその歯の状態で過ごしてきて、その状態に慣れているわけですから、良くなった時のイメージが持ちにくいのではないかと思います。

しかし、「良い噛み合わせって何?」という質問に対して、歯科医師はしっかりと答えを持っています。

私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。明らかに治療が必要な、日常生活や対人関係に支障をきたす歯並びや咬み合わせをお持ちの方にとっては矯正歯科治療をすることには様々なメリットがあります。見た目の印象がより良くなるだけではなく、口腔内の環境や体全体にも良い影響があると考えられます。

「噛み合わせ」という機能面を重視せず、ただ単に「キレイになりたいから」という漠然とした理由で歯列矯正を考えている人が圧倒的に多いかと思われます。

今回は、改めて「噛み合わせ」というものに注目して、多角的に考えてみましょう。

噛み合わせと歯の関係

噛み合わせと歯は、切っても切れない関係にあります。歯があるからこそ、それらの噛み合わせが適正だったり不具合だったりするのだから、当然の話ですよね。ここでは、その点について詳しく見ていきましょう。

正しい噛み合わせの歯列

「正しい噛み合わせ」と聞くと、上下の歯が1対1で噛み合っている状態をイメージする方もいるかも知れません。しかしその認識はハッキリ言って間違っています。

例えば、上側の前から3番目を「犬歯」と呼びますが、この犬歯一本に対して下側の犬歯とそのすぐ後ろの「第一小臼歯」の2本で受ける形が理想的です。

また、上側の前から4番目である第一小臼歯は、下側の第一小臼歯とそのすぐ後ろにある「第二小臼歯」で受ける形になるのです。

このように、上下の歯が互い違いに「1対2」の関係で噛み合っている状態が理想的な状態と言えるのです。

噛み合わせがうまく合わない歯並び

噛み合わせが良くない状態の代表例が「過蓋咬合」と呼ばれる噛み合わせの深い状態です。本来、上の前歯が下の前歯に1/3~1/4ほど被さるのが理想ですが、それより深いと口呼吸やガミースマイルの原因にもなります。

そうなる理由としては、上顎が成長しすぎたり下顎が小さかったりと、上下の顎のサイズがアンバランスなことに起因する遺伝的なケースが挙げられます。しかし、後天的に噛み合わせが狂うケースもあります。

例えば、奥歯は上下がしっかりと噛み合うことで前歯の噛み合わせを調節する役割を果たしています。その奥歯の生え方が乱れていたり、虫歯などで失ったままにしておくと、前歯も本来の役割を果たせません。

先述したように「1対2」で噛み合うと良いのですが、その要件を満たさない状態で放置すると歯並びは益々乱れていきます。また歯ぎしりなどですり減って、高さが足りない場合もトラブルの元になるでしょう。

歯を移動させて噛み合わせを正す方法

噛み合わせを悪くする原因となっている歯が見つかったら、どのように対処するのがベストでしょうか?答えはズバリ「歯列矯正」と言えるでしょう。

矯正歯科医は歯を動かすエキスパートですから、不具合を引き起こしている部位を適正な位置へと持っていく治療が可能です。ここでは、その仕組みや動かし方について解説しましょう。

歯列矯正の仕組み

歯列はU字型に連なっていますが、そのU字型の土台になっている歯茎の中には「歯槽骨」と呼ばれる骨があり、それぞれの歯は根の部分がそのなかに埋まっています。

矯正治療によって力を加えると、力の掛かった方向の骨にスペースが出来て、そこに歯が移動してくれます。それと同時に、歯が動いたことで出来た隙間は新たに骨が埋めてくれるのです。

これは、歯槽骨と歯の間にある厚さわずか0.2ミリほどの「歯根膜」の働きによるものです。力を受けた方向の歯根膜は縮みつつ骨を溶かし、反対側の歯根膜は伸びつつ骨を作っています。

このように歯槽骨に対して働きかけることで、骨の吸収と再生が繰り返され、適正な位置に歯を持っていくことが歯列矯正の仕組みなのです。

歯の動かし方

矯正治療による歯の動かし方は実に様々です。まず、歯の隙間を埋める為の処置として用いられる「水平移動」が挙げられるでしょう。また、歯のねじれを取るために回転させる「捻転」という動かし方も出来ます。

そして、歯茎から歯を引っ張り出す「挺出」と、その反対に歯茎内に歯を沈めていく「圧下」という垂直方向の動かし方も可能です。

歯茎から露出した歯の部分を「歯冠」と言い、歯茎内に埋まっている歯の部分を「歯根」と呼びます。歯根をあまり動かさずに歯冠を動かして角度を変える「傾斜移動」という動かし方も出来るでしょう。

さらには、歯冠をあまり動かさず歯根を動かす「トルキング」という手法も存在しているのです。

このように、歯列矯正では、歯を水平方向に移動させるだけでなく、ねじれをとるために回転させたり、垂直方向に移動させたり、傾斜させる方向に移動させて角度を変更したりと、術者の技術次第で様々な歯の動かし方が可能です。

噛み合わせは歯の位置だけが問題ではない?

当院診療風景

噛み合わせというものは、歯の並び方以外にも関係してくる要素があります。顎の関節や筋肉、歯槽骨というものが関係してくるので、そこにも注意を払う必要があるでしょう。

それらに対する視点が抜け落ち、不具合が生じたりすると、噛み合わせに悪い影響が出てくることが考えられます。この項では、歯並び以外の要因について見ていきましょう。

顎関節

歯を噛み締めるたびに顎の関節がポキポキと鳴ったり、口が開きづらくなったりしたら顎関節症を疑ってみるべきです。最悪の場合、口を開閉する時に痛みを感じてしまうでしょう。

このような症状は、噛み合わせによって引き起こされる場合以外に、精神的なストレスによって発症するケースもあります。仕事や人間関係に行き詰まりを感じているならば、その問題を解消するよう努めましょう。

筋肉バランス

口角が片側だけ上がっていたり、片方だけほうれい線が深かったりすることは、左右の筋肉バランスが崩れていることを表します。そういった症状が重くなると、顔全体が歪んでいる印象を受けてしまうでしょう。

その原因は「片側噛み」といって、左右のどちらか一方だけで食べ物を咀嚼する癖によって発生しています。そして、片側だけの筋肉が緊張することで、首や肩から腰に至るまで、こりに悩まされることもあるでしょう。

歯槽骨

「歯槽骨」は歯根が収まる骨で出来た土台であることは、すでに述べたとおりです。歯ぎしりや強く噛み締める癖のある人は、特定の部位の歯槽骨に影響を及ぼし、歯が揺れやすくなるケースがあるでしょう。

それに加えて歯周炎を発症していると、通常時の噛み合わせの力が掛かった場合でも受け止められない場合が出てきます。噛んだ時に力の掛かった歯が大きく動いたり、痛みを感じてしまうので注意しましょう。


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まとめ

以上、噛み合わせと歯の関係について説明し、治療法について触れ、歯の位置の不正以外にも考えられる噛み合わせのトラブルの原因について解説しました。

歯列矯正は美容を目的とした治療であるとされていて、実際にそういった目的でクリニックを訪れる人がたくさんいます。

しかし、しっかりと噛み合うように機能的な面を回復させることも、矯正歯科医の大事な役割です。

その点を無視して「こうすれば綺麗になれる」といったように、見た目だけを整える治療を施す医院は、なるべく避けた方が良いでしょう。

当院では、機能性を損なうことなく美しい歯並びを実現します。治療を検討されている方は、ぜひ一度お越しください。

                                  

                    

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