親知らずは矯正で抜歯する必要があるの?抜く前に気を付けておきたい注意点とは!
「矯正を考えているけど、親知らずを抜く必要ってあるのかな…」と、悩んでいる方も多いかと思われます。
私は日本矯正歯科学会の認定医・指導医として、数多くの矯正治療を行っています。大学病院で19年間矯正歯科医として勤めてきました。その後、銀座で開業し、これまで多くの抜歯症例、非抜歯症例を治療してきました。
そもそも、矯正治療で言われている「抜歯」とは、一般的に犬歯のすぐ後ろにある歯を抜く行為であり、必ずしも「親知らずを抜くこと」ではありません。
それでもなお、患者さんの口内環境によっては親知らずを抜いた方が良いケースもあります。
矯正治療にあたり、抜歯をせずに治療できる場合もあります。
今回は歯列矯正と親知らずの関係について、詳しく見ていきましょう。
そもそも親知らずとは?
矯正をせずとも親知らずを抜歯する人がいるくらいなので、「矯正をするにあたって、親知らずの抜歯は必須なのでは?」と考える人もいるかと思います。
そもそも親知らずとは、どのような歯なのでしょうか。
「親知らず」はどのような歯なのか
親知らずは上下左右の歯列の最も奥に、10代後半から20代前半の頃に生えてくる歯です。人によっては、いつまでも親知らずが歯茎の外へと出て来ず、中に埋まっている状態の方もいます。さらに、親知らずの頭の部分が萌出していたとしても、根元の骨に埋没しているはずの歯根が存在していないパターンもあるでしょう。
ほとんどの日本人の顎のサイズは、親知らずを綺麗に納めるほどの大きさがないといわれています。
その為、ぎゅうぎゅう詰めの状態で生えてくることになり、親知らずが前方に傾いて前の歯を押すような形になっていたり、横へとはみ出していたりと不規則な生え方をするケースが非常に多いのです。
親知らずは別名を「第三大臼歯」と呼ぶのですが、「食べ物をすり潰す歯」という意味合いの「臼歯」なのに、上下がうまく噛み合わさらず、その機能を果たしてくれません。
矯正に関わらず親知らずを抜いたほうがいいケース
矯正をするつもりの無い人でも、親知らずを抜いた方が良い場面が存在しています。
親知らずを清潔に保つことが難しい場合に加え、乱れた生え方により他の歯列を圧迫して痛みを感じる場面では、やはり抜歯をして問題の根本的な原因を取り除くと良いでしょう。
もちろん、生え方に特に問題がなければ抜歯する必要はありません。ここでは、親知らずを抜いてしまった方が良いと判断するための症状について紹介しましょう。
ケース①:虫歯になっている
親知らずは一番奥に生えることと、生え方が不規則である為に、歯を磨いてもブラッシングが届かずに虫歯になってしまうパターンが多いです。
また、ちゃんと萌出し切らずに、半分埋没しているような状態だと歯茎が邪魔をしてそこにプラークが貯まり、歯周病になってしまうことも考えられます。
これらのような理由で、メンテナンスが難しいと判断された時には歯を抜くことが視野に入ってきます。
ケース②:痛みを感じる
虫歯の痛みだけでなく、雑菌が親知らず周りの歯茎に繁殖すると炎症が起こってしまいます。このような症状を「智歯周囲炎」と呼び、歯茎が腫れて痛みを感じるのです。
また、炎症を放置しているとさらに広範囲の組織にまで侵入する「歯性感染症」と呼ばれる症状が引き起こされることも。
仮に顎の骨に感染してしまうと顔全体が腫れる「顎骨骨膜炎」になり、リンパに感染するとリンパ節が腫れてしまう「化膿性リンパ節炎」などの怖い病気を患ってしまいます。
矯正で親知らずの抜歯をする理由
20歳前後で突然出てくるので、成人したてで歯列矯正をしようと考えている人のなかには、親知らずが治療中に生えてくる場合も考えられるでしょう。治療前に生えたとしても気にする方は多いです。
「矯正の為に抜くことが絶対必要」と考えている方もいるかも知れませんが、決してそうではありません。ケースバイケースで抜く必要がある時と、抜かずに済む場合があることを覚えておきましょう。
どのようなケースで、抜歯が必要になるのかについて考えてみます。
親知らずがあっても矯正できるケース
親知らずがまっすぐ生えていて特に痛みを感じない場合は、他の歯に悪影響を及ぼすことが無いと考えられるので、抜歯をする必要がありません。
まっすぐ生えているということは、歯列が並んだU字型の土台に親知らずが綺麗に収まっていることを意味します。そのため、抜歯をせずに矯正することが可能になるのです。
ただし、ワイヤー型矯正装置を用いての矯正が始まると、治療を終えるまで装置を取り外すことが出来ません。装置が邪魔をして歯の手入れが行き届かず、虫歯になりやすい点には注意しておきましょう。
もし矯正している間に虫歯が見つかると、矯正治療を中断して虫歯の治療が優先されることになり、矯正治療が長引きます。歯ブラシの届きにくい親知らずの手入れには、特に気をつけましょう。
親知らずが歯並びに影響するケース
矯正したいけど親知らずの生え方がおかしいと悩んでいる人は、矯正前の精密検査やカウンセリングで、親知らずが今後の歯並びに影響するかどうかを確認する必要があります。
歯列というのは、垂直に近い状態で上下に生え揃っているものですが、親知らずがまっすぐ上方/下方に生えるスペースがなく、一つ前の7番目の歯を押すように出てくることがあります。
矯正中や矯正終了後に歯並びに影響してくることが考えられ、親知らずを歯を抜く必要があるという判断が下されることでしょう。
奥歯にスペースを生み出したいケース
矯正治療を受ける患者さんの症状によっては歯列を奥へと動かす必要があると判断される場合があり、その時に抜くケースが考えられます。
不規則に生える親知らずは、歯のメンテナンスの面からもデメリットが多いので、抜歯してしまうことがベストな場合もあると言えるでしょう。
後戻りをするかも知れないケース
矯正治療を終えた後に、歯をその理想的な位置のまま留める為の期間を「保定(ほてい)」と言います。「リテーナー」という器具を装着して過ごさなくてはなりません。
これを怠ると「後戻り」といって、矯正前の状態へと歯列が戻ってしまうのです。そして、親知らずが手前の歯列を押すことで後戻りの原因になってしまうと判断された場合は、抜くことになるでしょう。
矯正前・矯正中に親知らずを抜くときの注意点とは
さて、歯列矯正の為に実際に親知らずを抜くとなった時には、その生え方が不規則なので高い専門性が求められます。矯正歯科はその専門外である為、口腔外科に対応している他の医院を紹介してくれることもあるでしょう。
その場合、口腔外科などに対応している歯医者さんで親知らずを抜歯したあと、矯正歯科で治療を受ける段取りが一般的です。
矯正前などに親知らずを抜く際の流れと、抜歯後の注意点について説明します。
矯正前の親知らずの抜歯について
いざ矯正をするにあたって、親知らずを抜歯することになった人は「痛そうで怖い」と考えているかも知れません。しかし、抜歯するにあたっては麻酔を用いるので痛みを感じないことがほとんどです。
ただし手術後は出血することがありますし、数日間に渡って抜歯した周囲の組織に腫れが出るケースがあることを覚えておきましょう。
口内の一番奥は顎の神経が通っている部分に近い為、患者さんの症状によってはその神経を痛めてしまう恐れがあります。特に下顎には「下顎管」という神経の束が通っている為、注意が必要です。
神経を痛めてしまうと、顎のしびれや感覚が鈍くなってしまうことも考えられます。施術を受ける前に、その辺りの問題に自身の症例は当てはまるのか確認し、納得した上で治療を受けましょう。
親知らず抜歯の費用と期間
矯正治療の為に歯を抜くとなると、保険の適用外になることも覚えておきたいポイントです。虫歯や歯周病の恐れがある親知らずの抜歯と判断されてのことならば、保険の適用を受けられるでしょう。
矯正の目的で親知らずを抜歯する場合、一本につき5,000〜10,000円といった料金が必要になります。また抜歯をするタイミングは、矯正前や矯正中など患者さんの口内の状況によって変わるでしょう。
仮に矯正前に親知らずを抜く場合、抜歯後の出血や腫れを考慮して3日間ほど様子を見る期間を設けます。3日ほど経った時点で問題がなければ矯正装置を取り付けることになるでしょう。
親知らず抜歯後の過ごし方の注意点
親知らずの抜歯後は痛みや腫れが気になることから、つい抜歯した部位を舌先でなぞったり、指で触れたりしてしまう人も。しかし、そのような行為は治癒が遅れる原因になるので避けましょう。
痛みが引かない場合は、処方された痛み止めや抗生物質を服用します。また、飲酒を控えるのはもちろんのこと、食事はおかゆや柔らかく煮込んだうどんなど、傷口を刺激しないものにしましょう。
さらに、血圧を上げると出血の原因になってしまいます。そのため、激しい運動を避けたり入浴はシャワーで済ませると良いでしょう。
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抜歯の必要性以外にも、装置や費用など、本当はたくさん確認したいことがあると思います。
患者さんと接する際には、本心で話してもらえるようにスタッフ一同、常に意識しています。どこが気になっているのかという話から始まり、なぜ矯正をしようと思ったのか、なぜ当院に来ようと思ったのか、矯正をしてどうなりたいのか、毎月の通院はストレスにならないのか、費用はどれくらいを考えているのか、それはどうやって支払いたいかということまで、本音の部分を話していただき、患者さんに寄り添った治療を心がけています。少しでも不安に思っていることや疑問に思う事があれば心置きなく話していただきたいと思っています。
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まとめ
以上、そもそも親知らずと呼ばれる歯はどういったものなのか紹介し、矯正するにあたって抜歯する理由や注意点について解説しました。
患者さんの口内は人によってさまざまですから、親知らずを抜歯する必要があるかどうかは、個別の判断になってきます。
「なるべく健康な歯は残しておきたい」と考えている人は、一度そのことをクリニックに相談してみると良いでしょう。「歯を残したい」と要望を伝えることで、それでも医師がなぜ抜歯を必要とするのか丁寧に説明してくれると、患者さんも安心出来るからです。
当院では、なるべく患者さんからの要望に寄り添った治療を心掛けています。親知らずや歯列でお悩みの方は、ぜひ一度相談にお越しください。
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