歯列矯正で医療費控除は適用されるの?申請に必要な書類や注意すべき点とは?
税制について理解している人のなかには「歯列矯正を考えているけど、相当な出費になるから医療費控除を受けたい」と考えている方もいるかも知れません。
しかしその一方で、そもそも医療費控除の存在やしくみを知らない方や、歯並びを良くする治療について医療費控除が適用されるかどうか分からない人も多いはずです。
「ずっと以前から抱えていた自身のコンプレックスである歯並びの悪さを解消するため、クリニックで治療したい」
「でも、それなりのお金がかかってしまう。医療費控除という税金面での優遇制度があるようだが、税金のしくみはよくわからない。」
といったように、悩みが深まるばかりの人は、今回のテーマである医療費控除について知ってみてはいかがでしょうか?そのしくみについて見ていきましょう。
そもそも医療費控除ってどんなもの?
誰もが知っているようで、意外に認識されていないのが「医療費控除」という制度です。「控除(こうじょ)」という言葉が分かりづらいのですが、これは「一定の金額を差し引く」ということを意味しています。
つまり、この言葉から想像できるのは「医療にかかった費用を何かの金額から差し引く」ということになります。それは一体どういったものなのでしょうか。
支払った医療費の一部が戻ってくる制度
医療費控除というのは、病気などでたくさんの医療費を支払った際に、ある条件を満たせば、確定申告を行うことで「納税したお金の何割かが自身の元に還ってくる」という制度です。
一般的なサラリーマンだと、月給から所得税、住民税という形で税金が差し引かれて給料が支払われているため、人によっては税金を支払っていることに気付かない方もいるかも知れません。
しかし、税を納めていることを認識しているかどうかに関係なく、所得税と住民税の形で納めていた税金のうち、何割かが戻ってくるのですから、これを見逃す手はないと言えるでしょう。
お金が戻ってくる条件とは?
それでは、実際にお金がご自身に戻ってくる為に必要な条件とはどのようなものなのでしょうか。ズバリ答えを述べますと、一年間で10万円以上の医療費がかかった場合に適用されるのです。(ただし、総所得が200万円以下の人には別のルールあり)
この10万円という金額は、純粋な医療費だけでなく、通院のために利用した交通費なども足しての金額になります。
ただし、交通費といっても自家用車のガソリン代や駐車料金はこれに含まれません。原則的には公共交通機関を利用した場合に使用したお金に限定されていることを覚えておきましょう。
どの程度の金額が戻ってくるの?
まず、一年間に使った医療費の総額から10万円を差し引きます。同時に、医療の保険金などで補填された金額も差し引かれる点に注意しましょう。
そうした上で残った金額が、控除の対象となるのです。所得税は、得ている報酬によって税率が変わりますが、自身の所得税と住民税の税率をその金額に掛け合わせた分が、還付されるお金になります。
例えば、年収300万円の人が保険を使わず年間30万円の医療費がかかった場合、そこから10万円を差し引いた20万円に、税率を掛けることになるのです。
年収300万円の人の所得税の税率は10%ですから、20万円×10%で2万円。同じく住民税の税率10%を掛けた2万円を足して、計4万円が還付されるでしょう。
扶養家族などとの合算でも適用される
扶養家族など、生計を同じくする人がいる場合、その家族の分も合わせて10万円以上になると控除の対象となることを覚えておきましょう。
その際には、年収の高い人で申請すると有利になります。先ほどは年収300万円の場合のシミュレーションをしましたが、これが400万円となるとどうなるでしょうか。
その場合、所得税の税率が20%となるので、20万円×20%で4万円。これに10%で固定された住民税を掛けた2万円を足して、計6万円の還付が受けられます。
歯列矯正でも医療費控除は適用されるの?
歯列矯正は多額の費用が必要になるので、少しでも支出を減らす為ならばどのような制度でも活用したいでしょう。果たして、歯列矯正に医療費控除は適用されるのでしょうか?
その答えとしては「場合によっては適用される」としか言えないのが現実です。歯列矯正の治療においては、全てを一まとめにして「控除が受けられる」とか、逆に「受けられない」と言うことができません。
何故ならば、患者さんの歯並びの状況がそれぞれ違っていることが大きな理由になるのですが、分かれ目となるのは「病気の治療」なのか「美容」なのか、その目的によって異なってくるという点です。
美容目的では適用されない
「歯並びを整えて見た目を良くしたい」といったように、ルックスを良くするために歯列矯正をする場合、控除は受けられません。
何故なら、見た目を良くしなくても日常生活に支障がないと考えられるからです。その場合は自由診療となるので、全額を自己負担することになるでしょう。
病気を治療する場合は適用される
上顎の歯列が前方に出ている、いわゆる出っ歯だったり、逆に下顎の歯列が前に出た受け口などは、状態によっては「病気」と捉えられます。
また、口を閉じても上下の歯列が噛み合わず、自然と口が開いて口呼吸になってしまうような状態も含め、それらは不正咬合(ふせいこうごう)といって、噛み合わせを良くする「治療」が必要な状態です。
この場合、見た目を整えるのではなく、「噛み合わせ」という「機能」を回復するために治療を受けることになるので、控除が適用されるのです。
本人は美容目的の歯列矯正のつもりでも、医療費控除が適用される場合も
病気であるという自覚がなく、美容目的で歯科矯正を検討しており、初診相談にクリニックを訪れた結果、カウンセリングの際に歯科矯正治療が医療費控除の対象になることを通知されて驚くことも珍しくありません。
良くも悪くも自身の口の状態に慣れてしまっているので「食事の際に不具合を感じる」とか「発音しにくい」といった感覚がありつつも、それらが病気であると感じていない患者さんが意外と多いのです。
繰り返しになりますが、それぞれの患者さんで歯列の状態は異なっていますから、病気の状態なのか単なる美容目的の治療なのかによっては控除を受けられるかどうかは分かりません。かみ合わせが病気の状態であれば、そのかみ合わせを治療する費用については医療費控除を受けられる可能性があることになります。ですので、受けようとしている歯科矯正治療が医療費控除の適用となるかどうかを知る為だけでも、初診相談にクリニックを訪れる価値があるでしょう。
歯列矯正の医療費控除申請の際に必要なものとは?
3月といえば年度末になりますが、そのタイミングで行われることが多いのが「確定申告」です。これは、自身が一年間に得た報酬と、国に納めた税金を税務署に申告する行為のことです。
自身が得た報酬に対して納税額が多い場合に、支払い過ぎた税金が還ってくるので、最近では個人で申告する人も少なくありません。
この確定申告をする時に、併せて控除の申請をすることになります。その際に押さえておくべきポイントを以下に挙げてみましょう。
領収書の取り忘れに要注意
医療費が年間10万円を超えていることを証明するためには、医療費そのものとそれにまつわる交通費などの領収書が必要になります。
「あの時治療した際に受け取った領収書をなくした」といった場合は、残念ながらその費用は計上できないので、領収書は必ず受け取って、大切に保管するようにしましょう。
税務署への申告は3つの方法がある
確定申告は所定の用紙に必要事項を記入して、税務署に提出します。申請用紙には医療費控除に関する記入欄があるので、必要事項を記入して税務署に直接訪れて書類と領収書を提出する。これが一つ目のケースです。
しかし、人によっては税務署に足を運ぶ時間を作れない場合も考えられます。そのため、2つ目の方法として、書類と領収書を税務署宛に郵送することも認められています。
また、3つ目の方法として、最近では「e-Tax」という税務署が用意した電子書式をパソコンで立ち上げ、必要な事項を記入して、インターネットで書類を提出する方法もあります。
「e-Taxでは領収書が添付できないけど…」と迷った方がいるかも知れません。後に税務署から提出を求められる場合がありますので、医療費にかかった領収書はしっかりと保管しておきましょう。
まとめ
以上、税金を還付する医療費控除という仕組みについて説明し、条件によっては歯列矯正でも適用されることを解説しました。
また、申請するにあたって必要となるものや申請の方法について紹介し、この制度に対して理解を深めることができたかと思います。
治療を受ける最初から「私は見た目を変えたいだけなので」といったように、最初から自身のケースを医療費控除の対象外として考えてしまうのは、損をしているかも知れません。
お金の問題で治療に踏み出せない方は、一度カウンセリングの場で自身の症状が医療費控除の対象となるかどうか質問してみましょう。
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